アート塗り絵コレクション掲載作家 mitsuインタビュー

アート塗り絵コレクション掲載作家 mitsuインタビュー

2022-04-27 作家インタビュー

mitsu/イラストレーター

「アート塗り絵コレクション 〜旅・冒険編〜」に作品掲載のmitsuさんに塗り絵作品に込めた想い、制作過程など詳しくお話を伺いました。


「旅立」

mitsu/イラストレーター

筑波大学芸術専門学群日本画専攻 卒業
筑波大学大学院修士課程芸術研究科 修了
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Q. 今回のご応募にあたり、塗り絵の制作は過去にご経験ございましたか? また、塗り絵として作品を制作するのに意識された点などありましたか?率直にご感想もお聞かせください。


「旅立」線画

塗り絵の制作は経験がありませんでした。
最初は色を入れなくても作品として成り立つように、かなり描き込んで制作していました。書籍への掲載が決まり、出版部の担当者様からアドバイスをいただく中で、塗り絵として自由に色をつけて楽しむことや、塗った色の発色の良さを意識する様になり、最終的には線を削りました。

塗り方によって全く違う作品になると思うので、完成した塗り絵を観ることがとても楽しみです。


Q. 「旅立」作品のテーマについて教えてください。

私の中で、『旅・冒険=新しいことに挑戦すること』というイメージが真っ先に浮かびました。

そのイメージが伝わるように、童話「おやゆびひめ」からのワンシーンを切り抜きました。ヒキガエルに誘拐されたおやゆびひめが魚たちの力を借りて脱出し、今までに見たことのない世界へ飛び込んでいくシーンです。未知への挑戦は不安や億劫な気持ちが付きまといますが、必ず成長した新しい自分になれると信じれば、困難も乗り越えていけると思います。

制作時は私自身も新たな目標が出来た時だったので、自分を鼓舞する気持ちもあったかもしれません。同じように作品から少しでも前向きな気持ちになっていただけたら嬉しいです。


Q. mitsuさんの作品は、柔らかくて優しい雰囲気がとても素敵で、上手い線ではなく心地よい線を意識されているとの事ですが、描くうえでのポイントなどあれば是非教えてください。

ここ5年ほどは全てデジタルで制作していましたが、仕上がりに納得出来なくなり、昨年から線画のみアナログに戻しました。使用する紙も日本画を描いていたときの和紙に戻しました。

インクの滲みや描き心地を追求して、あえて生紙を買い、自分でドーサ引きしています。もともとドーサを引いてある和紙は、ドーサの効きが強すぎてインクがはじかれてしまう気がします。

ドーサ引き
ミョウバン(明礬)とニカワ(膠)を加えた液(ドーサ液)を和紙などに塗布する作業。絵の具のにじみを防ぎ、紙の伸縮をおさえるために行う。市販の和紙にはドーサが引かれているものが多く、ドーサを引いていない紙を生紙という。

また私の場合は、しっかりと構図を決めてから本画へ進まないと線に集中できません。「旅立」も、3枚ほどラフを描き直し構図を決めています。この作業が作品作りの中で最も長く、2週間以上かけています。(トータルでは線画のみで1カ月以上かけています)もっとサラッと描けたらいいなとも思いますが、それにはまだまだ経験不足だなと感じます。

上手さにこだわるのではなく、ひとつひとつの作業を楽しみながら制作していきたいです。


Q.今回塗り絵書籍の方はデジタル着彩ですが、原画はアナログ着彩もされています。淡い落ち着いたトーンで色が統一されていて、幻想的な雰囲気が魅力的です。着彩する際のコツやこだわりなど教えてください。

学生の頃は日本画が専門でしたので、塗るというより、薄く色を重ねて奥行きを出す技法に慣れています。多くの色を使わず同系色にまとめることが多いのですが、下地の色には、仕上がりの色とは全く違う色を使っていることも多いです。

水彩についてはあまり重ね過ぎると色が濁ってくるので、下地の色〜仕上がりまで色の重なりをある程度計算して制作しています。一ヶ所に集中しすぎず、広い面積から塗っていき、全体のバランスを見ながら色を入れていくことも着彩のコツかなと思います。

ただ色にも正解はないので、自由に好きな色を使って楽しむことが、魅力的な作品を作る一番の方法ではないかなと思います。


Q.mitsuさんは普段お仕事や作品を制作する上で、意識されていることはありますか?

私の中で、作品作りとクライアントさまからいただくお仕事とでは、制作する中で意識する部分がかなり違います。自分の作品は自分を素直に出すことを意識していますが、お仕事ではクライアントさまの要望を最も大切に、その中で自分にしかできない表現を模索します。

商品やお店のブランドイメージを崩さないように、そのジャンルごとの知識を得る事や、コミニュケーションも重要だと感じています。タイトな納期であることも多いので、制作する中でも的確な判断力が必要になります。


お仕事の大小に関わらず、ひとつひとつの作品に心を込めて、全力で取り組んでいます。


Q. 日々の生活で、ルーティンやリフレッシュ方法などありましたらお聞かせください。

私には子どもが3人おり、今はなかなか思うように制作できないときも多いのですが、この強制的に作品から離れる時間が、私にとっては良い気分転換になっています。一緒に花や野菜を育てる経験や、自然の中で思いっきり遊び、動物や綺麗な景色を見に行くことも、作品作りの大切な材料になります。

子どもたちが寝ている夜や早朝に制作することが多いので、良い香りのする美味しい飲み物が欠かせません。コーヒーや紅茶屋さんへ行って、自分の好きなものを探すことがリフレッシュのひとつになっています。


Q.ご自身の作家活動において影響を受けた人物や事柄などはありますか?

たくさんの方がいるので全てお話し出来ないのですが、最近は同じ母親でありながら、作家活動に励んでいる方によい刺激をいただいています。自分のペースで制作出来ないことがほとんどですが、みなさんとにかく時間の使い方が上手で、楽しく丁寧な暮らしを心掛けている方ばかりです。

制作するだけではなく、日々の生活や自分の役割を大切にする気持ちや経験が、全て作品につながってくると思います。制作中に迷ったり行き詰まったときは、できるだけ展示会へ足を運び、絵に限らず様々な作家さんの作品を直接観に行きます。良い作品に出会えるととても前向きな気持ちになれます。


Q.今後、作家活動で挑戦したいことはありますか?

今年度中に個展を開く予定です。その場で販売できるオリジナルのグッズの制作にも挑戦していきたいです。また、やはり書籍に関われるお仕事があれば積極的にチャレンジしていきたいです。書籍は作品を最も身近に感じていただける機会だと思っています。いつか表紙の絵に携わるのが夢であり目標です。

将来的には、大学で教育に関わる勉強をしていた事や、自身の子育て経験などを生かして、子ども向けのイベントやアート教室などの企画も立てていきたいと思っています。


Q. 「アート塗り絵コレクション」出版プロジェクトは、イニシャルギャラリーの作家支援プロジェクトの一つになりますが、このような取り組みについてどう思われますか?

作家が活躍できる場は多くはないので、このような機会を設けていただけることにとても感謝しています。展示会や展覧会に比べ、書籍はより身近な存在ですし、作品を観てくれる方との架け橋になっていると思います。

「アート塗り絵コレクション」は、様々な個性の作品が一冊にまとまっていることも素敵だと思います。普段あまり絵を描いたことのない方も、塗り絵は楽しめることが多いですし、塗り終わった後に、作家との合作を仕上げたような喜びを感じていただけることも魅力的です。

私も自分の作品を塗っていただくことを想像するだけで、とても幸せな気持ちになります。


今後の予定


2023年1月 個展開催予定


書籍情報


飾れるアート塗り絵アート塗り絵コレクション〜旅・冒険編〜

2022年3月24日販売
飾れるアート塗り絵
「アート塗り絵コレクション 〜旅・冒険編〜」

作品価格:定価1,650円(本体1,500円+税)
ISBN :978-4-9911614-1-4A4判/並製/64頁

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