「情報で溢れる社会の中で真のアイデンティティとは何かを再考する」neuronoa インタビュー

「情報で溢れる社会の中で真のアイデンティティとは何かを再考する」neuronoa インタビュー

2021-09-27 作家インタビュー

neuronoa (ニューロノア) / 画家

鮮やかな色彩で躍動感のある作品を描く、ニューロノアさんに、作品に対する想いやテーマ、制作過程について詳しくお話を伺いました。


ニューロノア

neuronoa (ニューロノア) 

神奈川県三浦郡葉山町出身。東京在住。 学生時代から、音楽、デザイン、映像などを制作するクリエイターとしてキャリアをスタート。近年は絵画や写真での表現を中心としたアーティスト活動を行なう。

詳しくはこちら

【HP】【Instagram】


「 キャンバスに躍動する美しさと凶暴さの共存 」

Q. 作家、画家を志したきっかけを教えてください

幼少の頃から画家を志していました。ただ、1番大きなきっかけとしては、小学3年生の時に図書館でジャクソン・ポロックを見たことかもしれません。それまで図書館というのは、静かに本を読んだり真面目に勉強をする場所という認識でした。

しかし、ジャクソン・ポロックのある種、暴力的な作品を見て、見てはいけないものを見たようなインパクトを受けたのを覚えています。また、それが行政の管理する公共の場に存在するということも含めて衝撃的でした。それと同時に自分の中での絵に対する枠が取り払われたような開放的な感覚を持ち、それからはもっと自由な絵を描くようになり、より画家として生きることを強く意識するようになりました。

ただ、その後は音楽、デザイン、映像などに関わるようになって絵から少し離れていたのですが、ある日デザインの過程でジャクソン・ポロックのようにドロッピングでのペイントを施す機会があり、絵を描いていた頃の感覚が蘇りました。

生々しい絵の具の質感、混ざり合う色彩、キャンバスに躍動する美しさと凶暴さの共存。そこには自分にとって、生活や将来の不安を超越した安らぎのような魅力がありました。そこから急速に画家にシフトしていきました。


Q. ニューロノアさんの作品は独特の色使いで躍動感のあるパワフルな作風がとても魅力的です。作品へのこだわりや現在の作風になったきっかけがありましたら教えてください。

以前は画面全体の抽象表現を主体にした作風だったのですが、概念レベルも踏まえた独自性を模索していました。模索する中で人をモチーフにした表現に興味を持ちました。きっかけはピントがボケた強い発色の人物写真を撮影してしまったことでした。それは本来、写真が持つ正確な外見の情報が歪み、その人物の内面の感情のようなものが色濃く表現されているような印象を受けました。

元々、情報が溢れる現代社会において、情報そのものの価値は日々薄れていくように感じていました。その状況に反して私たちはこれらに魅了され、情報の受信と発信から離れられなくなり、そして情報で溢れる社会の中で自身のアイデンティティを失いかけているようにも感じていました。

「 真のアイデンティティとは何か 」

そういった感覚をベースに、特定の人物をモチーフにしてキャンバス上に大量の絵具を塗布して描いたポートレートを制作しました。様々な色を何度も重ね合わせることで人物の情報は失われ、この工程を繰り返すことで人物から独自の情報が生成されます。

情報社会で失われ始めた人と人とが直接向き合う時に得られる感覚を求めるように、ひと筆ひと筆の塗りで表現されたポートレートは自らにとって本当に重要な情報を求めるような感覚と類似していました。この作品を提示することで、真のアイデンティティとは何かを再考するトリガーになれたらと思っています。



Q..作品を制作する上で、テーマなどはありますか?

抽象的なテーマとしては、自分が納得できる作品を作ることになります。その納得する基準は世の中の価値と照らし合わせているのかもしれません。世の中の状況や人々の感情、歴史的背景を含めて色々な視点で考察して価値を見出し、その価値の中で自分の気持ちに沿ったもの、そういったものを集積して結晶化されたものが作品になっているのかな、と思います。

具体的なテーマとしては、作品それぞれで必ず設定しています。興味や好奇心があることが前提ですが、何かをテーマにするとしても、その背景なども色々と調べます。ただ、そこからは漠然としたイメージやビジョンを元に制作に取り掛かることが多いです。理由としては、制作過程で起こる予期しないハプニングにも心が開かれていることがとても重要だと思っているからです。


Q. テーマの一つに、人をモチーフにしたものがありますが、こちらは実際の写真のシルエットを参考に制作されているのでしょうか?


はい、実際の写真を使用しています。例えば現在制作しているシリーズ(様々な時代の女優をモチーフにしたもの)があるのですが、実際に映画のワンシーンから抜き取った画像をもとに作品化しています。もちろん作品を作る上では、先ほど申し上げた予期しないハプニングに身を任せたり、気持ちのいい構図を追求することが重要だと思いますので、要素の相対的なバランスから実際の写真を崩していくことも多くあります。人の記憶が時間の経過とともに曖昧になって美化されていくような、そんな感覚に近いのかもしれません。


作品画像アップ

Q. ニューロノアさんの描く作品は、絵具を塗り重ねて作られたテクスチャーが特徴的だと思いますが、絵具の動きや仕上がりについては毎回イメージ通りに仕上がるのでしょうか?

以前は制作当初からAdobe Photoshopなどを利用して、構図や色彩も細かく設計していました。塗りの工程もすべてスケジュール設定していたので、強い完成イメージを持っている作品に関しては、ほぼイメージ通りに仕上がりました。
ただ最近は、絵具の動きや混ざり方の偶然性、そこから生まれた要素同士の関係性を発展させるなど、制作過程での自然な流れを大切にしています。そのほうが生命力を感じる魅力もあり、そちらを重視して取り組む事が多いです。



Q. 日々の作品制作にあたり、ルーティンやリフレッシュ方法などありましたらお聞かせください。また、どのようなときにインスピレーションを感じますか?


毎日、本を読んでいます。社会学系から経済、文学、詩集、サブカルチャー、アートまでジャンルは様々です。あとは寝る前に次の日にやることを大まかに決めています。1日を大切に過ごしたいというのもありますが、同時に翌日の楽しみにも繋がっています。

毎日のリフレッシュとしては昼寝かもしれません。20分程度ですが、1日に3回くらい睡眠をとります。あとは散歩も好きなので、朝や夕方に音楽を聴きながら歩くことがリフレッシュにつながっていると思います。

インスピレーションはやっぱり展示会などから受ける事が多いです。最近はコロナの影響もあって海外の展示には行けてないですが、国内でも素晴らしい展示はたくさんあるので、色々な作品をじっくり見ていると刺激になります。もちろん、InstagramやYoutubeからもインスピレーションを感じますが、実物ほどの影響はないかもしれません。実際の質感まで含めて細かい情報として認識すると一生物の記憶として刷り込まれる気がします。


本棚

Q. 普段どの様な場所で制作活動をされていますか?

最近、東京の郊外に引っ越しをして自宅にアトリエを構えて制作をしています。自宅とアトリエを別で持ってらっしゃる方もいて羨ましいな、と思いますが、私は常に絵のそばでアイデアを試したり制作が出来る場所のほうが、今のところ合っている気がしています。決して広くはないですが、日が差し込む大きな窓があります。



Q.ニューロノアさんのご出身は、神奈川県の葉山町とお伺いしました。海や山など自然の多いイメージがありますが、そのあたりは作品のテーマや作風に影響しているのでしょうか?

影響していると思います。太陽光が反射する青い海と広大な青空、その間の地平線を縫うようにトンビが気持ちよさそうに飛んで、それらを眺める深い緑の山があって。この場所にいると空気に色があるのがわかる気がします。そして、この世界には視点を変えるだけで様々な魅力が溢れていることを改めて思い出させてくれる場所です。



Q. ご自身の作家活動において影響を受けた人物や事柄などはありますか?

みなさん、そうかもしれませんが沢山の人物から少しずつ影響を受けています。特に影響を受けたのは、ジャクソン・ポロック、ジョージア・オキーフ、アンディ・ウォーホル、ジェームズ・タレル、スティーブ・ライヒ、エイフェックス・ツイン、ジョン ワーウィッカー、デール・カーネギー、ピータードラッカーなどです。アートに限らず音楽や経営者からも影響を受けています。共通しているのは全員、本質を常に見つめて行動している事だと思います。

あと、テクノロジーは大きく影響していると思います。少し前までは画材や技術などは時間をかけないと入手できなかったと思いますが、インターネットやスマホの発展で欲しいと思った情報や物は大抵すぐに入手出来る様になりました。興味の熱が冷めない状態ですぐに入手出来ることはとても大きな影響を受けていると思います。むしろこの時代でなかったら作家活動はしていなかった可能性すらあります。


Q.SNSでの活動について、気を付けている事、実践している事、反響などはいかがでしょうか?

コロナ禍でリアルな活動が少なくなってきている分、SNSでの活動は重要だと考えています。ただ、周りと比べたり、いいねやフォロワーなどの数字を追いかけて、自分にとっての大切な事を見失わないようにはしています。どんな投稿を、どんな人が、どんな反応をしてくださっているのか、それが1番重要ですし、純粋に嬉しい反響だと思っています。おかげさまで自分の方向性とマッチした反響も多く、作品の売約や素敵な展示への参加のご依頼なども増えています。

Q.今後、作家として挑戦したいことはありますか?

まずは国内での活動をもっと増やす予定です。活動内容としては個展を含めた展示はもちろん、音楽、ファッション、美容、飲食、その他、私のアートがお役に立てるのであれば行政、企業様とのコラボレーションも積極的に行っていきたいと考えています。このインタビューをご覧頂いた方々からも気軽にお誘い頂けたら嬉しいです。

並行して海外での活動もこれまで以上に増やしていきたいと考えています。コロナの影響もあるので難しいかもしれませんが、逆に出来ることもたくさんあると思っています。作品の傾向としても、現在の流れを踏襲した巨大な平面作品から超小品まで幅広く制作しています。もちろん平面作品だけではなく立体作品の制作も計画しています。

また、絵の具などの画材にとらわれない形でのアート作品にも挑戦していこうと思っています。映像とプログラミングを用いた作品などもそうですし、自分の興味が動く方向へ貪欲に表現したいと思っています。さらに将来的な話で言えば、アートの世界はまだまだ旧態依然とした所も多く、もっとDX化出来ないかなと思っています。仲間と企画しながら、まずは簡単なプラットフォームなどを設けて出来ることから始めてみたいな、とも思っています。


今後の展示情報



現在決まっているところでは、SHIBUYA PARCO ART WEEK 2021のひとつとして渋谷PARCO様の「no-ma」で9/28-10/4に展示に参加させて頂きます。その他はまだ詳細はお伝え出来ないのですが10月、11月、12月に東京、来年1月には大阪での大きな展示に参加を予定しております。この他にも展示や様々な活動はあると思いますので、ぜひ私のホームページやInstagramで最新情報をご覧頂けたら嬉しいです。

INTERVIEW

goTop